エントロピー - Wikipedia

エントロピー

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エントロピー
entropy
量記号 S
次元 L 2 M T −2 Θ −1
種類 スカラー
SI単位 ジュール毎ケルビン (J/K)
CGS単位 エルグ毎ケルビン (erg/K)
プランク単位 ボルツマン定数 (kB)
  

エントロピー (entropy) は、物質拡散の程度を表すパラメーターである。エントロピーは、ドイツの物理学者クラウジウスが、カルノー・サイクルの研究をする中で、dS=dQ/Tという式の形で導入した概念で、当初は、「でたらめさの尺度」としてではなく、熱力学における可逆性と不可逆性を研究するための概念であった。しかし、原子の実在性を強く確信したオーストリアの物理学者ボルツマンによって、エントロピーは、原子や分子の「でたらめさの尺度」である事が論証された。そして、更に、物質から得られる情報に関係があることが指摘され、情報理論にも応用されるようになった。

一般に記号 S を用いて表され、S = kB ln Ω と定義される。ここで、Ω は物質がとりうる状態の数、kBボルツマン定数である[1]。この定義より、エントロピーはボルツマン定数と同じ「エネルギー÷温度」の次元をもち、単位は J/K である。

目次

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たとえば、分子が自由に動き回る気体は、分子が結晶格子に束縛されている固体よりも、エントロピーが大きい。砂糖を水に溶かして水溶液中で拡散させると、砂糖のエントロピーが大きくなる。しかし、本が本棚に並んでいるのと床に散らばっているのとではエントロピーは変わらない。どのような本の並び方(巻数順に並べるか、大きさ順にするかなど)はどちらが乱雑かということは議論できないからである。一般に、エントロピーが乱雑さを表すというのは、原子・分子のレベルでの話であり、我々の暮らしている大きさの世界の話と混同してはならない。

[編集] 用語の歴史

ルドルフ・クラウジウス1854年にクラウジウスの不等式として熱力学第二法則を表現していたが、彼自身によって「エントロピー」の概念が明確化されるまでにはそれから 11 年を要した。 非可逆サイクルで 0 とならないこの値をクラウジウスは仕事と熱の間の「変換」で補償されない量として、1865年の論文においてエントロピーと名付けた。 エントロピーという言葉はギリシャ語で「変換」を意味するトロペー (τροπή) に由来している。

その後ボルツマンやギブスによって統計力学的な取り扱いが始まった。 情報量としてはクロード・シャノン1948年ジョン・フォン・ノイマンの勧めに従って命名している。

似た用語のエンタルピーとは別ものであり、注意を要する。

[編集] 熱力学におけるエントロピー

マクロへの熱の移動を表す示量性状態量を表す。

[編集] 定義

適当に状態 O のときの初期値 S(O) を定めておく。状態 O から状態 A まで、可逆の経路 C をたどって移ったとき、状態 A のエントロピー S(A) を

S(\mathrm{A})=S(\mathrm{O})+\int_C\frac{d'Q}{T}

と定義する(Q : 系が受け取る熱量T : 系の温度) 。

[編集] 導出

独立変数として系の温度Tともう一つ他の状態量をとることとする。

クラウジウスの不等式より、n 温度可逆サイクル(断熱過程と準静的等温過程を交互に繰り返すことによって得られる)において

\sum_{i=1}^n\frac{Q_i}{T_i}=0

である。Qi : 系が熱源iから受け取る熱量、Ti : 熱源 i の温度(なお可逆サイクルであるため Ti は熱源 i から熱を受け取る時の系の温度に等しい)。これより n→∞ とすると、

\oint\frac{d'Q}{T}=0

が導ける。

つまり、前述の通り

S(\mathrm{A})=S(\mathrm{O})+\int_C\frac{d'Q}{T}

と定義すると、S(A) は過程 C に依存しない状態量となる。

[編集] エントロピー増大則

状態Aから状態Bへと移る任意の過程 X と、可逆過程 C を考え、C−1C の逆過程とする。このとき XC−1 を連結させた過程はサイクルとなる。

このサイクルについて、導出と同様にクラウジウスの不等式から

\oint\frac{d'Q}{T_\mathrm e}\le0

が導ける。Te : 熱源の温度(一般に系の温度と一致しないことに注意)。つまり、

\int_X\frac{d'Q}{T_\mathrm e}+\int_{C^{-1}}\frac{d'Q}{T_\mathrm e}\le0

である。

このとき C−1 の過程中においては、この過程は可逆過程であるから、熱源の温度 Te は系の温度 T に一致する。従って

\int_X\frac{d'Q}{T_\mathrm e}+\int_{C^{-1}}\frac{d'Q}{T}\le0

、つまり

\int_X\frac{d'Q}{T_\mathrm e}\le\int_{C}\frac{d'Q}{T}

となる。ところが、

\int_{C}\frac{d'Q}{T}=S(\mathrm{B})-S(\mathrm{A})

であるために、

S(\mathrm{A})+\int_{X}\frac{d'Q}{T_\mathrm e}\le S(\mathrm{B})

となる。

これより、特に断熱系(外から仕事が加えられても良い)においては d'Q=0\, なので、

S(\mathrm{A})\leq S(\mathrm{B})

という結果が求められる。これがエントロピー増大則である。熱力学第二法則と同値なクラウジウスの不等式からこれが求められたことにより、熱力学第一法則エネルギー保存則と対応するのになぞらえて熱力学第二法則とエントロピー増大則を対応させることもある。なお、熱の出入りがある系ではエントロピーが減少することも当然起こり得る(先の解説において \int_{X}\frac{d'Q}{T_\mathrm e} が十分小さい場合がその例である)。

[編集] 性質

エントロピーは物や熱の属性で、それらに対する拡散の程度を表す示量性状態量である。

エントロピーが増加するために、熱エネルギーのすべてを他のエネルギーに変換することはできない。したがって、熱エネルギーは低品質のエネルギーとも呼ばれる。

化学反応や電場・磁場等の影響がない時、熱力学第一法則より

dU=d'W_\mathrm{in}+d'Q_\mathrm{in}\,

U : 系の内部エネルギーQin : 系に与えた熱量、Win : 系に与えられた仕事)と表すことができる。平衡状態であれば、d'W=-PdV\,P: 系の圧力、V: 系の体積)であることと、エントロピーの定義を変形した d'Q=TdS\, より、

dU = - PdV + TdS\,

と、内部エネルギーを完全微分の形で表すことができる。

[編集] 統計力学におけるエントロピー

熱平衡状態に達した孤立系の取りうる微視的状態数を Ω として、ボルツマン定数kB とした時、エントロピー S

S = k_\mathrm B \ln \Omega\,

で表される。

また、等確率の原理より、ある微視的状態をとる確率 P\sum P\Omega=1 を満たすことから、

S = -k_\mathrm B \sum P \ln P

と表すこともできる。 すなわち、統計力学におけるエントロピーは情報理論におけるエントロピー無次元量)と定数倍を除いて一致する。

[編集] ブラックホールのエントロピー

ブラックホールのエントロピーは表面積に比例する。

S = \frac{Ak_\mathrm{B}c^3}{4\hbar G}

ここで S はエントロピー、A はブラックホールの事象の地平面の面積、\hbarディラック定数(換算プランク定数)、kBボルツマン定数G重力定数c光速度である。

[編集] 生物学におけるエントロピー

シュレーディンガーは、生命をネゲントロピー(負のエントロピー)を取り入れエントロピーの増大を相殺することで定常状態を保持している開放定常系とした。負のエントロピー自体は後に否定されたが、非平衡系の学問の発展に寄与した。(散逸構造も参照のこと)

[編集] 脚注

  1. ^ IUPAC Gold Book - entropy, S

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク


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