セミオートマチックトランスミッション - Wikipedia

セミオートマチックトランスミッション

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セミオートマチックトランスミッションとは自動車の変速方式の分類の一つであり、本来は手動変速機におけるクラッチ操作を自動化したものを指す。

オートマチックトランスミッション(無段変速機(CVT)を含む)の変速比を手動で随時選択できるようにしたものを「セミオートマチックトランスミッション」と呼ぶケースもあるが、根元の技術上では本来の意味と異なる用法である。これは一般に「MTモード付きAT」や「スポーツAT」と呼ばれる。

目次

[編集] フォード・モデルTの2段変速機

1908年から製造されたフォード社の大衆車「モデルT」(いわゆる「T型フォード」)はペダル作動の2段遊星歯車変速機を搭載しており、摩擦クラッチの作動は半自動式で変速用のシフトレバーはなかった。

ハンドブレーキを掛けている間は、クラッチが切断されている。チェンジペダルを踏み付けたまま、ハンドブレーキをゆっくりと緩めることで発進できる。アクセルペダルはなくステアリングホイールを握ったまま操作できる、手動式スロットルレバーが付いている。

チェンジペダルを踏んでいる間はローギア、足を離すとハイギアで後進の際には停止中に別のバックギア用ペダルを踏むだけである(最高速度は60km/hそこそこなので、2速式でも不都合はなかった。急勾配は超低速のバックギアを代用し後進してクリアせよという合理的(?)な仕様)。

当時としては極めて運転の容易な変速システムであり日本では大正時代の一時期、フォード・モデルT専用の免許が存在したほどである(のちのAT限定免許の先駆であろう)。このイージー・ドライブな変速システムはモデルTが世界的に普及した一因であると共に、のちにアメリカにおいて自動変速機が普及する素地を作ったとも言われている。

[編集] プリセレクタ・ギアボックス

フォード・モデルTの変速方式は3段以上の多段化に適さないため、高速化・高出力化を進める競合他社の追随するところとはならなかった(モデルTの後継形として1927年に登場したフォード・モデルAも、通常のマニュアル3速になっている)。しかし、変速を容易化する見地からモデルTの手法を更に発展させた手法が1920年代に出現する。プリセレクタ・ギアボックス(preselector gearbox)である。これは、半自動式クラッチと遊星歯車変速機を組み合わせた半自動変速システムである。プリセレクタ・ギアボックス搭載車はフットペダルに通常のクラッチペダルの代わりにチェンジペダルを装備し、ステアリングコラムかもしくはダッシュボードに小型のシフトレバーが付いている。段数は4段程度が普通だった。

発進時にはまずシフトレバーを1速に入れる。チェンジペダルを一踏みして足を離すと1速につながり、発進できる。半クラッチの必要はないが、アクセルの適度な調節は必要である。2速以上へのシフトアップ、またシフトダウンも同様の操作で行われる。停止時にはブレーキを踏めば、自動的にクラッチが切れる。慣れれば相当迅速なシフトチェンジができる。変速に先立って変速段を選択しておくことから「プリセレクタ」の名称が生まれた。フランスのコタル(Cotal)式やイギリスのウィルソン(Wilson)式があり、概して信頼性の高いシステムであったと言われる。

プリセレクタの半自動クラッチには遠心式、電磁式、流体継手など各種の方式が用いられたが特に流体継手はほかのクラッチ方式よりも滑り現象によって「半クラッチ」を行いやすいため、この方式の主流となる(いわゆるクリープ現象への着目)。

最初の採用例は1928年にイギリスのヴィッカーズ・アームストロング社が製造した大型バスであった。イギリスとフランスで多く用いられ、特に1930年代のイギリスでは高級車・中級車で広く使われた。

レーシングカーの分野でもイギリスのレイモンド・メイズがライレーをベースに開発した小型レーサー「ERA」がプリセレクタを搭載し、1930年代後半の小型車レースで優れた成績を収めている。またプジョー1937年にスポーツカー「402ダールマット・スポール」にコタル式プリセレクタを搭載、ル・マン耐久レースで好成績を収めた。

第二次世界大戦後に至ってもディムラー、ランチェスターやドライエなどがまだ採用していたが1950年代末期には自動変速機の普及によって衰退している。

プリセレクタは既に廃れてしまった方式だが、流体継手の優位性と遠隔操作の多段式遊星歯車変速機の技術を確立した点でのちの自動変速機に連なる重要な存在であると言える。

[編集] 自動クラッチ

1930~1960年代にはマニュアルトランスミッションのクラッチのみを自動式としたモデルが、ヨーロッパで製造された。一般にごく廉価な大衆車ではアクセル操作に頼る遠心クラッチ、小型車~中級車ではアクセル開度に応じた電圧変化でクラッチを断続する電磁クラッチ、「サキソマット」に代表される吸気管負圧を利用した真空式、中級以上の車種の一部には流体継手(流体クラッチ)が用いられた。システムとしてはシンプルなため低コストなこととシフトレバーとギアボックスが機械的につながっているため、トラブル時の冗長性が高い利点がある。

電磁クラッチ車の中には、シフトレバーに静電容量スイッチが内蔵され、シフトレバーに触れることでクラッチを切断するモデルも存在した。日本では1960年代の日野・コンテッサスバル360スバル・レックス(初代、550cc化後の後期型)、日産・チェリー(2代目)、日産・パルサー(初代)での例がある。しかし意図せずシフトレバーに触れ走行中にクラッチが不意に切れることを防ぐため、レバーに触れ始めてからクラッチが切れるまでにタイムラグが設けられており、このことが渋滞などで求められる頻繁な変速・クラッチ断続操作に適さないきらいもあり、日本では早くに廃れ市場のニーズは完全な自動変速機に移行した。だがヨーロッパ車の一部には、21世紀初頭に至ってもこの種の方式が残存している。商用車でも、クリープ専用の流体継手(フルード・カップリング)を追加したものが、日本製の2tクラスのトラックを中心に数を増やしつつある(いすゞスムーサーEなど)。

[編集] モータースポーツでの利用

前述の戦前形競技車は別格として、レーシングカーでの採用例は遙かに下ることになる。

[編集] F1

F1においては、1989年にレーシングカーデザイナーのジョン・バーナードフェラーリの「フェラーリ・640(F189)」に初めて実戦投入した。これはステアリングホイールの裏側に変速指示用のパドルスイッチを設け、レーシングドライバーがステアリングから手を離すことなく操作ができるようにしたものである。

セミオートマチックトランスミッションは、多くの優位性をもたらした。

  • 変速時のエンジンの回転数を電子的に制御することによりドライバーが競技により集中できるようになり、またオーバーレブによる車の故障を未然に防ぐことができるようになった。
  • コクピットシフトレバークラッチペダルを設置するスペースが不要となり、モノコックをシンプルかつコンパクトに設計できるようになった。そのために車体デザインの自由度が増え、空力的に有利なデザインを取ることができるようになった(ただし導入当初はクラッチペダルがあった。また、ドライバーの希望で設置されていた例もある)。
  • 変速の段数を増やすことができるようになった。従来型のマニュアルシフトでは、変速数を増やせばシフトの選択操作ミスの可能性が増えるのとシフトレバーのための空間が余計に必要となるためである。また変速数を増やすことにより、エンジンをよりピークパワー重視の方向に設定することが可能となった。
  • 従来型の手動操作に比べ、シフト操作にかかる時間が短くなった。シフト操作中は車は加速できないので、結果的に加速能力が向上した。

しかしながら導入当初はそれらの効果を疑問視され故障の増加や車重バランスの変化を嫌い敬遠するチームもあったが、フェラーリのナイジェル・マンセルが同年の開幕戦で優勝したことを皮切りに1991年に導入したウィリアムズチームは同年のチャンピオン争いに肉薄することで従来型マニュアルシフトに対する優位性を証明することとなり、以後は導入するチームが相次いだ。1994年のルール改正は俗に「ハイテク規制」とも呼ばれる各種電子制御を規制する内容であったがセミオートマチックトランスミッションは規制の対象とはならずに生き残り、1995年以降はF1競技に参加する全ての車両が何らかのセミオートマチック機構を搭載している。

ちなみにF1カーにもクラッチボタン(もしくはストロークがあるパドル)があり、これを押すことでクラッチを手動で操作できる。走り始めてからの変速の時には使わない(使う必要がない)が、ピットインするときやスタートのときのみ(すなわち、ニュートラルから1速に入れるとき)使用する。

[編集] WRC

WRCにおいても、グループB末期にアウディがクワトロS1で投入したセミATがあげられる。これはクラッチペダルは残しておき、シフトレバー部分にクラッチスイッチをもうけスイッチを押しながらシフトチェンジをすることによってクラッチ操作をするシステムである。また、Gr.A時代にはスバルがインプレッサグループA仕様でセミオートマチックトランスミッションを実践投入した。これは、通常のHパターンマニュアルトランスミッションを圧縮空気で作動するアクチュエーターで操作するシステムであった。そのためトランクスペースに圧縮した空気をため込むタンクが装備されている。しかし変速スピードが遅くドライバーはスペシャルステージでは自分の手で変速を行い(シフトレバーは残されていた)、変速スピードの必要ないリエゾンでこのシステムを使用するなど実戦で本格的に使用に耐えるシステムでは無かった。のちに三菱がグループAのランサーエボリューションIVでシーケンシャルシフトを採用するのを皮切りにトヨタがカローラWRCに通称「ジョイスティック」と呼ばれるスイッチで操作するセミオートマチックトランスミッションを搭載し、ほぼ同時期にスバルが従来の圧縮空気から油圧に変更されたシステムをインプレッサWRカーに搭載した頃から実戦で使用できる物になった。

2007年時点では、ワークスマシンはほぼ全てセミオートマチックトランスミッションを装備している。インプレッサ以外のマシンはドグミッションのシーケンシャルマニュアルトランスミッションをベースにしているが、インプレッサはHパターンのマニュアルトランスミッションをベースとしている。これはラリーではサーキットレースと違いスピンがよく起き、そのリスタートの際に1速への変速を迅速に行わなければならないためである。シーケンシャルベースのシステムだと1速に戻すために何回もパドルやレバーを操作しなければならないのに対しHパターンベースのシステムだと1速へ直接変速でき、タイムロスが少ないためと言われている。

WRカーではクラッチペダルやシフトレバーは残されている(一部シフトレバーが無いマシンもある)。これはF1マシンと違いコクピットスペースに余裕があり、システムに異常が起きても手動での変速が可能で冗長性が高い(リタイアせずにすむ)ためである。またラリーのSSでは多様な路面状況下で静止状態から発進するため、ドライバーの要求どおりの発進加速を得るためにクラッチペダルは必要である。しかし近年ではローンチコントロールシステムが搭載されるようになり、スタックの脱出等にしか使われなくなっている。

[編集] グループC

ポルシェはポルシェ 962CにPDKと呼ばれるデュアルクラッチトランスミッションをターボラグ対策として搭載していた。後にグループCの後継とも言えるルマンのプロトタイプクラスのトヨタ・TS020などもエア圧を利用したセミオートマチックトランスミッションを採用している。

[編集] インディ・カー

インディカー・シリーズでは長らくセミオートマチックトランスミッションは使用が禁止されてきたが、2008年よりインディ500を除くすべてのレースで使用することを義務づけられた。

[編集] GP2

GP2では2005年のシリーズ開始当初より、ザイテック製のセミオートマチックトランスミッションを使用している。

[編集] A1GP

A1GPでは2005-2006年のシリーズ開始当初より、Xtrac製シーケンシャルマニュアルギアボックスにザイテック製のセミオートマチックギアシフトシステム(EGS:Electrically-assisted Gearshift System)が装着されている。

[編集] フォーミュラ・ニッポン

フォーミュラ・ニッポンも長らくセミオートマチックトランスミッションは使用が禁止されてきたが、2008年より前記ザイテック製のEGSが装着された。

[編集] SUPER GT

SUPER GTでは2009年よりGT500クラスのエンジンがフォーミュラ・ニッポン用と基本設計が同じもの変更され、併せて前記ザイテック製のEGSが装着された。

[編集] 市販車での利用

BMW・7速SMGのセレクター

マニュアルトランスミッションとオートマチックトランスミッションの長所を合わせたものとして搭載されている。

パドル式のシフターを採用する市販車の場合、ステアリングのロックトゥロックのレシオの関係からパドルの位置が逆転した際の操作ミスを防ぐためにパドルはステアリングコラムに固定されている場合が多い。

[編集] 商用車での利用(バス)

[編集] エアシフター

フィンガーシフト」を参照

[編集] 商用車での利用(トラック)

スムーサー (変速機)」を参照

[編集] ゲーム筐体

大半のレースゲームの筐体はセミオートマになっており、アップダウンでギアを変える。なお、パドル式のシフターを採用したのはセガスーパーモナコGPが初となる。現在のレースゲームの大半はシフトノブ方式でパドル式はあまり見られない。

主な採用ゲーム

[編集] 関連項目


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