トリウム - Wikipedia

トリウム

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アクチニウム - トリウム-プロトアクチニウム
Ce
Th
Th-TableImage.png
一般特性
名称, 記号, 番号 トリウム, Th, 90
分類 アクチノイド
, 周期, ブロック 3, 7 , f
密度, 硬度 11724 kg·m−3, 3.0
単体の 銀白色
原子特性
原子量 232.03806 u
原子半径 180 pm
共有結合半径 no data
VDW半径 no data
電子配置 [Rn] 7s2 6d2
電子殻 2, 8, 18, 32, 18, 10, 2
酸化数酸化物 4 (弱塩基性酸化物)
結晶構造 面心立方構造
物理特性
固体 (磁性体)
融点 2028 K
(1754.8 , 3191 °F)
沸点 5061 K
(4787 ℃, 8648 °F)
モル体積 19.80 × 10−3 m3·mol−1
気化熱 514.4 kJ·mol−1
融解熱 16.1 kJ·mol−1
蒸気圧 no data
音の伝わる速さ 2490 m·s−1 (293.15 K)
その他
クラーク数 0.0012 %
電気陰性度 1.3 (ポーリング
比熱容量 120 J·kg−1·K−1
導電率 6.53 × 106 S m−1
熱伝導率 54 W·m−1·K−1
イオン化エネルギー 第1: 587 kJ·mol−1
第2: 1110 kJ·mol−1
第3: 1930 kJ·mol−1
第4: 2780 kJ·mol−1
(比較的)安定同位体
同位体 NA 半減期 DM DE/MeV DP
228Th {syn.} 1.9116 α 5.520 224Ra
230Th trace 75380 年 α
SF
4.770
 
226Ra
 
231Th trace 25.5 時間 α
β-
4.213
0.389
227Ra
231Pa
232Th 100% 1.405×1010 α
SF
4.083
 
228Ra
 
234Th trace 24.1 β- 0.273 234Pa
注記がない限り国際単位系使用及び標準状態下。


トリウム (Thorium)は、原子番号 90 の元素元素記号Thアクチノイド元素の一つ。北欧神話の軍神または雷神トールにちなんで名づけられた。安定同位体は存在しない。銀白色の金属で、常温、常圧で安定な結晶構造は、面心立方構造(FCC)。1450℃以上で体心立方構造(BCC)が安定となる。比重は、11.72で、融点は 1750℃、沸点は 4780℃(沸点は異なる実験値あり)。

常温で空気中では、表面が酸化被膜を作り内部は侵されない。粉末状にすると常温でも発火して酸化物(ThO2)となる。塩酸、王水に溶けるが、硝酸には不動態化して溶けない。アルカリにも不溶。高温で、水素酸素窒素ハロゲン元素と反応する。原子価は、+2価、+3価、+4価で、+4価が最も安定である。

モナズ石(モナザイト)に含まれる。安定同位体は存在しないが、トリウム232は半減期が140億年であり、比較的天然に多く存在する。トリウム232はトリウム系列の親核種である。

トリウム232に高速中性子を当てると、トリウム233となり、これがベータ崩壊して、プロトアクチニウム233となる。これが更にベータ崩壊して、ウラン233となる。ウラン233は核燃料になるが、この一連の核反応による原子力利用はほとんど行われていない。


中国では/と表記する。

目次

[編集] 歴史

ベルセリウス (J.J.Berzelius) によって、1828年に発見。北欧神話の雷神トール (Thor) に因んで名づけられた。

[編集] 特徴

トリウムは明るい銀白色の重金属である、数ヶ月の間は銀白色を保っているがそのあとは灰色や黒に変色して曇る。トリウムの酸化物(ThO2)はすべての酸化物の中で最も高い融点を持つ(約3300℃)。トリウムを空気の中で熱すると明るい火花を出して燃える。

[編集] 同位体

詳細は「トリウムの同位体」を参照

トリウムは安定同位体が存在せず、すべての同位体が放射性である。
トリウムには26の同位体が知られており、質量範囲はトリウム210からトリウム236までの既知の同位体が知られている。約140億年の半減期を持つトリウム232、75380年の半減期を持つトリウム230、約1.9年の半減期を持つトリウム228が存在しこれらの同位体は比較的安定している。

残りの同位体は30日未満の半減期を持っており、10分未満の半減期を持つ核異性体のトリウムが存在する。

[編集] 産出

トリウムは岩石の中やの中に微量に見つかる。ウランの3倍豊富で、鉛と同じくらい一般的な金属である。土の中に12ppm含まれている。モナズ石(モナザイト、CePO4)、方トリウム石(ThO2)からとられる。トリウム232は140億年の半減期(地球の年齢の約3倍)をもっており放射線の放出もごく微量なため一般に安定同位体でない事を無視してよい。しかしほかのトリウムの同位体は強力な放射能を持っている(特にトリウム228)。

[編集] 警戒

粉末状態のトリウムは自燃性で、注意して扱うべき金属である。さらにトリウムには毒性があり、体内に入り肺、すい臓、血液につくと発癌する危険性がある。

[編集] 用途

一時期光学ガラスに使用された。超低分散ガラスを作る事ができた。放射壊変による放射線の問題があるので現在ではランタノイドに置き換えられた。 また、第二次世界大戦前後には、二酸化トリウムのコロイド製剤であるトロトラストX線血管造影剤として用いられた。投与されたトロトラストは、大部分が肝臓に沈着し、持続的にα線を出し続け、投与後数十年して、肝腫瘍、なかでも肝内胆管癌と血管肉腫などをはじめとする多くの副作用を引き起こした。

酸化トリウム (ThO2) は安定な化合物で、るつぼアーク溶接電極などに利用される。

また、トリウムから放射されるアルファ線電離作用でランタン(ランプ)の炎を安定させる目的で使われることもある。

トリウム232 (ThO2コロイドとして) はトレーサーとして使用されたが、WHOの下部機関IARCより発癌性があると (Type1) 勧告されている。

[編集] 核燃料としてのトリウム

長所

  • 埋蔵量が豊富で、鉱石価格が安い
    • トリウムは長い半減期を持つため自然界に比較的多く存在する。ウランやプルトニウムのように核燃料として使用でき、ウランよりも多く存在するためウランに代わる核燃料として期待されている。鉱石価格的には2009年現在ウランの1/3といわれる
  • 高速増殖炉でなくても転換(増殖)する
    • 燃料を1燃やして再処理すると0.8-1.06の燃料が得られる。ウランでは0.6以下
    • このためウランは埋蔵量/資源量の0.7%が燃えるウラン235で、軽水炉では再処理しても0.5-2%しか燃やせないが、トリウムは資源量の殆どを燃やせる
  • 核分裂反応生成物が少ない
    • 加速器駆動未臨界炉を使えば、半減期数万年の物質を核分裂させて、半減期30年前後に短縮可能だが、天然ウラン並みに放射線が低下するのに、尚500年近くかけるか、再分離コストが必要になってしまう。トリウムの1Gwd当りの核分裂生成物は(炉形式にもよるが)概略ウランの1/3なのでバックエンドコスト・環境負荷が小さい
  • 燃料交換回数・再処理工場処理量を減らせる
    • 原子力発電の8円/kwhに占める再処理コストは0.7円弱/kwhで比較的大きい。トリウムは転換(増殖)できるため燃料の減りが少なく、気体核分裂生成物を運転しながら抜けるために、溶融塩中の核分裂生成物が増えて中性子を吸収するまで長く運転できる。溶融塩炉と組み合わせた場合、燃料交換は30年に1回ですむ。
  • 炉内核分裂物質量を少なくできる
    • 濃縮度が低くても転換(増殖)によって中性子発生が続くので、初期に高濃縮の燃料を装荷しなくても燃料交換周期を長く取れるので、余剰反応度が小さくでき、制御棒抜けが起こっても挙動がおとなしくなる。
  • 核兵器に転用されにくい
    • 使用済み燃料に含まれるタリウムの同位体が強烈なガンマ線を放つために、再処理が遠隔操作によるタリウム分離を必要とし、高度な技術と巨額の設備投資を必要とするので、途上国が核兵器に転用するのが困難である

短所

  • 再処理に高度技術と巨額投資が必要
    • 使用済み燃料に含まれるタリウムの同位体が強烈なガンマ線を放つために、再処理が遠隔操作によるタリウム分離を必要とし、高度な技術と巨額の設備投資を必要とするので、途上国が核兵器に転用するのが困難である
  • 燃料の精錬がウランより高コスト
    • モナズ石などからのトリウム精錬がウラン精錬よりコストかかる


インド・米国・ロシア・豪州に大量の埋蔵があり、ブラジルも有望視されている。インドでは原子力燃料にウランではなく国内で豊富に産出するトリウムを原子力燃料にする計画がなされている。

全般に、既存の原子力が核兵器の生産から進化した体系であったのと、反原発運動の高まりで1980年代から2003年頃まで原子力関連の技術開発予算が削減されたために、トリウム利用の燃料製造・再処理の技術開発が進んでおらず、また設備投資もなされてこなかった

近年、下記の事情でトリウムが見直されている

  • 地球温暖化問題の絡みで原子力が見直されており、懸案の超長半減期高レベル放射性廃棄物問題も加速器駆動未臨界炉で、保管期間の大幅縮減が可能になりそうなこと。
  • 中国・インドの膨大なエネルギー需要をまかなう必要がある一方で、旧ソ連核兵器解体プルトニウムの供給が終了に近づきウラン需給がタイトになる見込みであること
  • それらに伴い、簡易/安価な乾式再処理などの技術開発へ研究予算が投入されるようになった事
  • 世界的な原発建設ラッシュで、新規にトリウム再処理施設に設備投資しても、再処理需要が確保できそうになったこと
  • トリウム鉱石であるモナズ石から電気自動車ハイブリッド・カー、船舶の統合電気推進に必要な同期電動機のためのネオジムや、船舶機関や家庭用燃料電池として有望視される固体電解質燃料電池に必要なランタン、新世代の原子炉・高温ガス炉の冷却材に不可欠のヘリウム、そして肥料・洗剤材料の燐が採れるために、副産物を含めた精錬の採算性向上が見込まれている事
  • 発展途上国での原発計画の林立と核不拡散問題でトリウム炉を援助したほうが望ましい事

などのためである。

[編集] 関連項目

ウィキメディア・コモンズ


1 元素周期表 18
1 H 2 13 14 15 16 17 He
2 Li Be B C N O F Ne
3 Na Mg 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 Al Si P S Cl Ar
4 K Ca Sc Ti V Cr Mn Fe Co Ni Cu Zn Ga Ge As Se Br Kr
5 Rb Sr Y Zr Nb Mo Tc Ru Rh Pd Ag Cd In Sn Sb Te I Xe
6 Cs Ba * Hf Ta W Re Os Ir Pt Au Hg Tl Pb Bi Po At Rn
7 Fr Ra ** Rf Db Sg Bh Hs Mt Ds Rg Cn Uut Uuq Uup Uuh Uus Uuo
8 ...
* La Ce Pr Nd Pm Sm Eu Gd Tb Dy Ho Er Tm Yb Lu
** Ac Th Pa U Np Pu Am Cm Bk Cf Es Fm Md No Lr

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