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DOHC

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DOHC (ディーオーエィチシー) とは、Double OverHead Camshaft(ダブル・オーバーヘッド・カムシャフト)の略で、レシプロエンジンにおける吸排気弁機構の形式の一つ。

目次

[編集] 特徴

DOHCエンジンのシリンダヘッド(直押し式)の断面
DOHCエンジンのシリンダーヘッドの断面。
排気バルブと吸気バルブが別々のカムによって開閉される。

シリンダーヘッドにおけるバルブの駆動について、吸気側と排気側で別々のカムシャフトを備えるものを指す。SOHCに比べ、カムシャフト1本あたりの負荷が軽減される。さらにOHVとの比較において、バルブを駆動するための機構(プッシュロッドおよびロッカーアーム)が不要であり、カムによるバルブの直押しが可能となるため、基本的に高回転化・高出力化が容易である。一方で、一部のDOHCエンジンにはバルブを開く量(リフト量)を多くする為に、ロッカーアームが使われているものや、またDOHCと同じ直押し式を採用するSOHCエンジン[1]も存在する。

バルブレイアウトは、吸気バルブと排気弁バルブがシリンダーの半円を境に対向したクロスフロー形か、あるいは吸気弁と排気弁を対角に配置した形[2]などが選択可能である。また、燃焼室形状の設計自由度が高いことなど、利点が多数あることから高性能エンジンの多くに採用されている。プライベートチューンにおいては、バルブタイミングを吸気側・排気側で別々に調整できる自由度の高さも特徴であるが、欠点としては部品点数が増える、カムシャフトが2本になるためシリンダーヘッドが大型化する[3]、ロッカーアームを使用しないエンジンの場合にはバルブリフト量を増加させる為にカムシャフトの新造が必須になるなどの問題がある。

[編集] 歴史

1912年に、エルネスト・アンリがフランスプジョーレーシングカーのために開発したのが最初であるとされるが、スペインイスパノ・スイザ社の設計者マルク・ビルキヒトによる着想を剽窃したという説もある。

部品点数が多く機構が複雑であることから、1950年代以前はレーシングカーや高級スポーツカーに限定された技術であった。

第二次世界大戦後、戦前からDOHCエンジンを積極的に手掛けてきたアルファ・ロメオが量産に転じたほか、ヨーロッパ日本の大手自動車メーカーは、従来の量産エンジンを元にヘッド部分をDOHC形に改造した高性能エンジンを開発、スポーツモデルに搭載して市場に送り出した。

日本で初めてDOHCエンジンを搭載した市販4輪自動車は、1963年に発表された軽トラックホンダ・T360である。T360が水冷4気筒2バルブDOHCを採用したことに特に意味はなく、ホンダが手持ちの自動車用エンジンは開発中であったSシリーズのDOHCエンジンしかなかったためである。ただし当時の軽自動車は2ストローク機関のものが多く存在し、それに4ストローク機関でカタログスペック上の馬力で対抗するという必要性はあった[4]。その後、同様に2ストローク機関のものが数多く存在するオートバイにおいて、DOHCは広く採用されている。国産のオートバイでは1965年にホンダ・CB450KO、1972年にはカワサキの輸出専用車種Z1 900[5]などがDOHCエンジンを搭載した。

本来スポーツモデル向けの機構と見なされてきたDOHCであるが、トヨタ自動車は吸排気効率を高めつつ理想的な燃焼室形状を確保できる自由度の高さに着目し、省燃費化・低公害化の手段として実用車向けの普及型DOHCエンジン(ハイメカツインカム)を開発した。1986年8月以降、同社のガソリンエンジン乗用車のほとんどに採用された[6]。また、軽自動車の分野では2001年5月以降にはスズキの全ての軽自動車が、2007年12月以降にはダイハツの殆どの軽自動車[7]が、それぞれDOHCエンジンを搭載するようになった。

以来、量産型DOHCエンジンは世界の多くのメーカーに普及している。 更に、ディーゼルエンジンにもDOHCを採用する例(三菱・パジェロ[8]=4M41、三菱ふそうキャンターローザエアロミディ日産・シビリアン=4M50(T5)、いすゞ・ビッグホーンいすゞ・ウィザード=4JX1[9]いすゞ・エルフ日産・アトラスマツダ・タイタン=4JJ1-TCS)も散見される。

[編集] 他の名称について

一般ユーザー向けのキャッチフレーズ的なニュアンスで、「ツインカム(TWIN CAM)」と呼ばれることもある。四輪ではトヨタ[10]と日産[11]、スズキ、ダイハツが、二輪ではカワサキがこの呼称を採用している。

ただし厳密にはDOHC=ツインカムではない。これはV型エンジン水平対向エンジンなど、シリンダーヘッドを2つ以上持つエンジンの場合、SOHCでカムシャフトが2本以上になるためである[12]。もっとも、これをツインカムと称する例はまず無い。トヨタはシリンダーヘッドが2つになるV型のDOHCエンジンに関しては「FOUR CAM」と称していた。

例外的にハーレーダビッドソンは自社のカムシャフトが2本のV型2気筒OHVエンジンをTWINCAMと称している。これは自社の従来のエンジンのカムシャフトが1本だったことから、それらと区別するためである。

表記はトヨタが「TWINCAM24(4バルブ6気筒)」「TWINCAM16(4バルブ4気筒)」「TWINCAM20(5バルブ4気筒)」、日産は「TWINCAM 24VALVE(4バルブ6気筒)」「TWINCAM 16VALVE(4バルブ4気筒)」、ダイハツが「TWINCAM-16V(4バルブ4気筒)」「TWINCAM-12V(4バルブ3気筒)」となる。

また別名では、主に直列型エンジンがTWIN CAM、V型および水平対向型エンジンがそれぞれFOUR CAMなどと呼ばれる。TOHC(Twin OverHead Camshaft、ツイン・オーバーヘッド・カムシャフト )と表記されることもある[13]

[編集] マルチバルブ

4ストロークエンジンにおいて、1つのシリンダーに3つ以上のバルブを持つことをいい、そのエンジンのことをマルチバルブエンジンという。一部にSOHCやOHV(OHVの場合は一部のオートバイあるいは産業用、農業機械用を含む一部のディーゼルエンジン)のマルチバルブエンジンが存在するものの、ほとんどはDOHCであり、前述のプジョーの最初のDOHCエンジンも同時に最初のマルチバルブエンジンでもあった。両者は密接な関係にある。

詳細は「マルチバルブ」を参照

[編集] その他の動弁機構--歴史順

[編集] 関連項目

[編集] 脚注

  1. ^ この場合、吸気側および排気側のどちらか片方が直押し式となり、もう片方はロッカーアーム駆動となる。
  2. ^ 一部のディーゼルエンジンのみこのレイアウトを採用する。
  3. ^ 例外としてトヨタのハイメカツインカム等に見られる狭角バルブのDOHCエンジンなど。
  4. ^ 同社の後発の軽トラックであるTN360およびアクティはSOHC。次いで市販された軽乗用車のN360には空冷2気筒SOHC2バルブエンジンが採用されており、カタログスペック上の馬力ではなく、実用域での馬力重視に転換している。
  5. ^ 翌年には排気量を750ccに変更した国内向けモデル750RS(Z2)が登場している。
  6. ^ カムリビスタを皮切りに、カローラスプリンターコロナカリーナマークIIクラウンスターレット等。1994年1月以降はカローラバンスプリンターバン等の一部のガソリンエンジン商用車に搭載するようになった。
  7. ^ 2009年4月現在、同社の福祉専用車両のミラ セルフマチック(L250S型)を除く。
  8. ^ 3代目モデルで初採用。モデル末期にはカタログ落ちしていたが、4代目モデルの2008年10月の一部改良に伴い復活した。
  9. ^ 2005年現在は生産終了。
  10. ^ 2T-G系などが主力の時代はDOHCと称している。
  11. ^ FJ20系しかDOHCエンジンが無かった時代にはDOHCと称している。
  12. ^ 逆に、各Vバンク上に1本ずつのカムシャフトを持つが、それぞれが吸気または排気専用のカム列を持ち、SOHCを名乗りながらもシリンダー側から見るとDOHCに類似したカムシャフト配置となる狭角V型エンジンのようなケースもある。
  13. ^ 鈴木孝『エンジンのロマン 発想の展開と育成の苦闘』(三樹書房、2002年) ISBN 4-89522-287-X

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